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一時間以上前に下校時間が過ぎた校舎の三階。
そこから二階に降りる階段の一番上の段に腰掛ける小さな背中。
その背中の隣に無言で座り込むと、びくっと肩を揺らす貴女。
それが可愛くて、ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られるのを、ぐっと我慢する。
「……ねぇ先輩。知ってましたか?」
「……何を?」
「今日って、ふたご座流星群が見える日らしいですよ」
「……そっか」
……ねぇ、先輩。
その艶のある黒いロングヘアも、笑うと垂れる大きな目も、いつも口角の上がっている薄い唇も。
俺はその全てが大好きで、全部を俺のものにしたいって思ってる。
……ねぇ、先輩。
知らないでしょう。俺がこんなにも狂おしいほどに先輩のことを思っているだなんて。
「……先輩」
「……何?」
なのに。
「……何でこっち見てくれないんですか」
「……」
聞いたけど、聞かなくてもわかっていた。
ずっと見てるから、わかるんですよ。
どんな些細なことでも。気付きたくないことも、全部。わかってしまうんですよ。
……ねぇ、先輩。
「……一人で泣かないでください」
自分の右肩に先輩の頭を引き寄せると、すぐに聞こえた嗚咽。
背中に手を回して先輩の右腕を摩る。
俺の左手は、無意識に強く握っていた。
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