お彼岸です

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お彼岸です

「ところで今日は、どうして呼び出されちゃったの?」 「今日は9月23日だから、ね。日向に中間報告をしてもらおうと思ってね」 「秋分の日、だから?」 「そう」  太陽が真東から登り真西に沈む。昼夜が大体同じくらいの日。  それがどう関係るのかな? 「別の言い方をしてごらん」  と篁さん。 「お彼岸」 「だろ? 今日は彼岸(かのきし)……つまりお盆と同じで冥府と現世が繋がりやすい日なんだ。せっかくだから、お前を呼び出した」  呼び出し……?  うう、嫌な予感しかしないよ。 「何の御用です?」 「現状の中間報告をして」 「10名……いや、最初に1名逃がしちゃったから、全部で9名の亡者を黄泉送りに成功しました」 「ふうん。ひと月半で、9人とは。なかなか頑張っているね」  篁さんが「さすが私の子孫」と目を細めて喜んでくれた。 「牛頭・馬頭の力が大きいです。この調子で行くと、あと二か月ほどで全員『黄泉流し』にできますよ」 「……その言い方、なんか嫌」  島流しをもじって言ったんだけど、篁さんには不評だったみたい。 「そう、うまく行くかね?」 「え? 珍しく篁さんにしては後ろ向きなご意見。子孫を信じて」 「信じたいけど、ここで前向き思考(ポジティブシンキング)の日向に良くない報告だよ」 「え?」  中間報告、聞きたいだけだったんじゃないの? 「そんなんで、いちいちお前を呼び出さないよ」  うぬぬ。子孫会いたさに、連れてきたのかと思ってた。  私はこの後小鬼ちゃん達と遊んで帰ろうと思ったのに。 「お前、ここを帰省先の田舎か何かと思ってないかい?」  思ってたかも。  優しいお爺ちゃん(篁さん)に可愛い知り合いのちびっこ(小鬼ちゃん)たち。お盆に見たばかりなので、ちょっと懐かしい地獄の風景。将来、ここに住みたいか住みたくないかと聞かれたら、確実に「住みたくはない」って答えちゃうところも田舎に似ているかも。
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