イジメ。だめ、絶対。

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イジメ。だめ、絶対。

「実はだね、逃げ出した亡者の中に神級のものが居る」  はい?  そもそも、どうして、神様がここ(地獄)にいらっしゃるの? 「兄弟に疎まれて、何度も殺されては黄泉がえりを果たした復活の達人の神様だよ。日向もまったく知らない間柄じゃない」  いえ、うちは仏教なので神様とはご縁がないと思われます。 「お前の詠唱……黄泉へと通ずる穴をあける詠唱なんだけど」  ああ、「内はほらほら、外はすぶすぶ」ですね。  ちょっと可愛い詠唱だから、一部の限られた女子高生に人気ですよ。  つまりその女子高生というのは、私なんですけどね。 「もとはと言えば、その神様のものなんだ」 「はいぃぃぃぃ?」  復活の達人・大国主命様。  才能あふれるこの神様は、末弟に生まれたため、兄神達に疎まれた。  身内っていうのは恐ろしいもので、それはそれはありとあらゆる手で殺されたそうだ。その度に、お母さん神様が黄泉の国の神にお願いして生き返らせてもらったんだって。  それでもなお、命を狙われるものだから、大国主様は親戚頼って別の国に逃げた。  そこで出会った親戚の美しい娘と結婚。  だけど、今度は頼りにしていた舅に疎まれた。 (まあ、娘を取られちゃった父としてはそうなるかもね)  娘の父、アルアルだと思われた。  そして、舅から無理難題を言ってはいびられる日々になった。兄弟神にヤられぬように修行つけてもらっている風に解釈できなくはないけど、どう見てもそれはイジメ。婿イビリ。  とうとう自分を疎んじる舅の神様に、草原で火を放たれて焼き殺されそうになった。  ううむ、そこまでイジメるか。  あわやって時に、野鼠がやってきて教えてくれた言葉。  それが「内はほらほら、外はすぶすぶ」  そこの土地は内は洞になっていて、外はすぼまっているってことだった。  大国主様が強く踏みしめると足元の土が崩れ、そこに洞が現れた。洞の中に入って火をしのいだそうだ。 「なぜそのような方が、ここに?」 「何度も送られて、居心地よくなったんじゃないかい?」 「確かに、地獄の責め苦がないのなら、ここはそれなりにいいとこだと思いますよ。小鬼ちゃん達可愛いし」  足元にまとわりつく、小鬼ちゃんを一撫でした。  小鬼ちゃん達は、ぎゃっぎゃと声を上げて喜んでいる。  現世で言う癒し効果あるよ、小鬼ちゃん。  私がここに来ちゃったら「小鬼カフェ」開きたいくらいだよ。  そういう意味でも、その神様の気持ちは分からないでもないな。
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