3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
私のご先祖様
「おはよう、日向。お目覚めかい?」
「おはよう、お父さん……って何? なんで『おめざめ』なんて気取っちゃってんの?」
私を起こす声の主はお父さんじゃなかった。
「……あれ? お父さんじゃない。それにここは……」
また赤い大地に横たわっていた。
「もしかして、ここ……」
「冥府だよ」
「……篁さん!」
私を起こしてくれたのは、小野篁さんだった。
「ちょっと衝撃だよ。この私の声は、お前の父に似ているのかい?」
「ほぼほぼ一緒でした」
気品と口調は違ったけど、さすが先祖。声質は一緒なのね。
そういえば、弟の影ちゃんも声変わり。電話に出た時には、お父さんか影ちゃんかすぐには分からない。
「この私の声が、あのお調子者と一緒とは……」
お父さんと声が似ていると言われ、地味に落ち込んでいる平安時代の狩衣まとったこのご立派な方は、小野篁さん。私のご先祖である。
その昔、天皇に仕える役人でもあった。だけど、黄泉がえりの井戸を通じて冥府へと行き来し地獄の閻魔大王様にもお仕えした、二足の草鞋を履いた凄いお方。文武両道というけど、この方はあっちでもこっちでも大活躍。どちらかと言えば、文々両道だ。
(なんか、例えが蜂みたいになったけど)
最初のコメントを投稿しよう!