105号室

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「木葉丸出てきませんね……」 「うーん……」  様子を見てくると言って105号室の中へ入っていった木葉丸は、30分経っても戻っては来なかった。 「じゃあ……入ってみるか……」 「え?いや、待って下さい、ならば自分が様子を見てからで」  一歩ドアに近付いた舞を遮るように、梓が進み出る。 「ダメだって、木葉丸が戻ってこれない場所だよ、危険過ぎるよ」 「ですが」 「梓が行っても呑まれるだけだよ」  強く言えば梓は舞の前から一歩退く。本家分家合わせても舞の霊力が一番高い、剣術では梓に分があるにしても、自分が出る幕でないのは分かっているのだろう。 「……分かりました……何かあれば」 「中に入らないでお母さんに連絡取ってね……」 「……はい」  不承不承と言った顔の梓はまだ納得していないようだが、この問題を解決出来るのは舞しかいないと梓も理解していた。だからこそ心配なのだろう。 「あ……」 「……報告にあった……」  舞と梓はドアから下がり、アパートのコンクリート塀まで戻った。  二人で顔を見合せ頷き合う。梓は肩から提げていた製図を入れるような黒の筒状のケースを肩から外し、中から紫色の布の包みを取り出した。 「どうぞ」 「ありがとう」    ずしりと重たいそれは古い日本刀だ。こんな日中に屋外に出していては通報されかねないので、見えないよう布で巻いてある。その布ごと両手で抱え、舞は長く息を吐き出した。  隣にいた梓の気配は既にない。多分建物の影にでも移動したのだろう、木葉分家でも諜報活動を得意とする家柄だけはある。隠密行動に長けている。  舞は塀から一歩進み出てターゲットに語り掛けた。 「会えませんよ」  だって貴方はもう……。
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