24人が本棚に入れています
本棚に追加
やっと店に到着して出てきたお好み焼きは、やっぱり見た目には何も変わらなかった。
はいはい、具材が違うんでしょ。
前回のお好み焼きツアーで学んでいた乃依は、ペラっと生地をめくってのぞいてみるけれど、特に変わった様子もない。
何だろう?
「まあ、食べてみんさい」
いつものように一片を小皿に取り分けてくれる栄ちゃん。
乃依はまた箸で一口、ぱくっ。
っっ!!
か、辛っ!?
「ははっ。辛いじゃろ」
栄ちゃんは楽しそうに乃依を見ていた。
「『三次辛麺』焼き。麺に唐辛子が練り込んであるんよ。ソースもピリ辛になっとる」
くそう、そっちか。
今回もまた具材に変化があるのだろうと思っていた乃依だったけれど、まさか麺とソースにヒミツがあったとは。
すっかり栄ちゃんにやられてしまった気分だ。
「呉市わかる? あっこは細うどんが入っとるんよ。形も丸じゃなくて、半月型なん。ほんまは今日行きたかったんじゃけど、南と北で正反対じゃけ諦めたんよ。でもやっぱ、食べ比べて欲しかったのぉ」
栄ちゃんは相変わらず、ずっとお好み焼き話をしている。
乃依はヘラで食べるのに挑戦してみることにした。
鉄板の上でお好み焼きを一口サイズに切って、そのまま口へ。
熱っ! 辛っ!
でも……美味しいっ!
切って口へ、切って口へが止まらない。
乃依はコートを脱いだ。
あの、寒がりの乃依が。
最初のコメントを投稿しよう!