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この日はやたら寄り道が多かった。
と言うより、お好み焼きはさっきの一枚で終わりだった。
『もののけミュージアム』の見学を終えても、車はまだ北上している。
えっ? ここは……!
着いたのは『備北丘陵公園』だった。
来るのは初めてだけれど、乃依もよく知っているイルミネーションスポットだ。
まだ明るいので点灯はされていないけれど、周りには少しずつカップルの姿が見え始めている。
それはそうだろう。
今日は、クリスマスなのだから。
乃依は自分のスウェットとパンツ姿に場違い感を覚える。
お好み焼きだと思っていたから……
「ここさ、アスレチックあるん。まだ時間あるし、やろうや」
あ、そっちか。
それならばと、乃依は栄ちゃんの後についていく。
目についたアスレチックをやったりやらなかったりしながら周る。
「何か、懐かしいなあ」
「そうよね。私もこんなの十年ぶり? いや、もっとかな。子どものころ以来」
難易度はそれほど高くなくて、コートを着たままでもそこそこ楽しめた。
途中、手袋を家に忘れて来たことに気づく。
だって、お好み焼きを食べるだけだと思っていたし……
寒さを忘れるほど何かに夢中になったことのない乃依は、自分の気持ちによくわからない言い訳をしながら、寒空のアスレチックに挑んでいた。
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