出会ってすぐにカップルデート?! あつあつお好み焼き物語☆

3/16
前へ
/16ページ
次へ
 乃依は何とか組まれた肩から逃げ出して、後ろの彼を振り返る。 「あ、あの」   「しーっ、見てみぃ、これ」  彼の示す先には乃依がさっき係の人に握らされたクーポン。  クーポン1万円分 (※この会場で当日のみ使えます)  あ!    なるほど、この特典が狙いか。  乃依は納得しながらも少し呆れて、彼の方を睨む。 「じゃ、俺らデートしてくるけぇ」 「おお、いけいけ」 「ええのお」    彼は友達に見送られ、乃依の手を取って会場へと歩を進めた。 「あの、いいんですか? お友達」 「ああ、あいつらはええんよ。そっちは……ええと、名前は?」 「乃依です」 「ノイね、りょーかい。ノイの連れは?」  乃依は首をふりながら、いきなり呼び捨てされたことにドキッとする。  だって、『乃依』と呼ぶ人は、家族か女友達ぐらいしかいないから。 「一人か、ならいいね。あ、俺は栄太郎(えいたろう)。栄太郎でも栄ちゃんでも、好きに呼んで」 「栄太郎さん」 「うわ、『さん』はやめて」 「栄……ちゃん」 「うん、それで」  自己紹介もそこそこに、栄ちゃんはぐんぐん進んでいく。 「おめでとうございます! いってらっしゃ~い」  担当者やまわりからの明るい声。  乃依はもう恥ずかしくて、マフラーとレイに顔を一層うずめて歩く。  おかげで寒さを忘れていることには、まだ気づいていなかった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加