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すでに目的を達成した乃依は、残りのクーポンを栄ちゃんに預けた。
「いいの? イエーイ」
栄ちゃんは嬉しそうに歩いていく。
本当は帰っても良かったのだけれど、何となくもったいない気がして、乃依はそのまま後について行った。
何だか『栄ちゃん』と呼ぶのもこなれてきた気がする。
「おめでとうございます!」
その間もあちこちから声はかかり、特典のプレゼントが渡される。
殻付き牡蠣にカキフライ。醤油や地酒の小瓶まで。
いつの間にか乃依の手は、手土産でいっぱいになった。
「持とうか」
栄ちゃんが乃依の持つ、みかんの小袋に手をのばす。
「ありがとう」
その時、お互いの手が触れた。
「うわ、ノイの手、冷たっ」
えっ?
そう言えば、八朔大福を食べた時に手袋を外したままだった。
寒がりの乃依には考えられないことだ。
「何かあったかいもん、食お」
栄ちゃんは荷物を全部持って、フードコーナーへ歩みを進め、乃依は手袋をはめて慌てて続く。
飲食スペースに空席を見つけると、栄ちゃんはそこに滑り込んで乃依を座らせ、ホットコーヒーを買ってきて乃依の前に置いた。
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