出会ってすぐにカップルデート?! あつあつお好み焼き物語☆

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「ごめん、俺、気が利かんのよ。食いもんのことしか頭にのうて」  栄ちゃんが申し訳なさそうに頭を下げる。 「別にいいんよ。楽しかったけん。それに、本当に食べ物が好きなんだなってわかるし」    これは嘘ではなかった。真冬の外出が嫌だったはずなのに、今は何だか楽しい。  栄ちゃんの表情がくるくる変わるのも面白いし。 「クーポンも後一枚じゃけ、何か食ったら帰ろうな。牡蠣汁、あっちに鍋もあったかな。あとお好み焼き、どれにする?」  ちょうど目の前でお好み焼きが焼かれていた。  薄く伸ばした生地の上に、たっぷりのキャベツ、一番上に豚バラ肉を載せて、ヘラでひっくり返す。  豚バラ肉が下に来て火が入り、一番上に来た薄く焼けた生地が蓋となって野菜が蒸される。    その横で麺を炒め、さっきのかたまりを麺の上に載せる。  最後に卵を割って丸く伸ばし、その上に麺ごと移動させて、再度ヘラでひっくり返し、ソースや青のりなどをかければお好み焼きの完成だ。  広島ではよく見るお好み焼きを焼く工程。  別に嫌いなわけではないけれど、乃依は好んで食べようとは思わなかった。  店ごとに味が違う、なんて言うけれど、おなじみの『お好みソース』をかけてしまえば味も全部同じに思える。  栄ちゃんに気を許していた乃依はそれを素直に伝えてしまい、ものすごい非難を浴びた。 「はあ?! ノイ、それは広島県民にあらず!  お好み焼きの奥深さを知らんだけじゃって」    牡蠣汁を食べながら、何だかずっと説教されている。  こんなにお好み焼き信者だったとは。 「三日、いや、二日俺にくれ! お好み焼きの素晴らしさを教えちゃる」 「二十三年間、広島で生きてきて出した結論なんよ? そんな、たかだか二日で……」 「いや、絶対に好きにならせてみせる!」  そんなこんなで、次の週末にまた会うことになってしまった。  あれ? またデート?  
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