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次の週末。
乃依は車に乗っていた。
目的地は備後府中市。広島県内でも、乃依がまだ足を踏み入れたことのない場所だ。
小旅行じゃん。
広島市内のお好み焼き屋を回るくらいにしか考えていなかった乃依は、ちょっと驚いていた。
先週に続いて、真冬に出歩く自分にも驚いているけれど。
栄ちゃんはさっきからずっとお好み焼きのうんちくを述べている。
まあ、適当に聞き流しているから、面倒ではない。
広島市内から一時間半ぐらいかかって、やっと目当ての店に到着した。
「おう、栄ちゃん。どうぞ」
「ありがとう、大将」
席は大きな鉄板を囲むようにあって、座った所から焼いている手元が見える。
前もって連絡していたのか、二枚のお好み焼きはすでに仕上げの工程に入っていた。
ほら、またいつものソース。
何となく味の予測ができてしまう。
「はい、できたよ」
お好み焼きは鉄板の上を移動して、乃依の目の前に置かれた。
栄ちゃんは鉄板からヘラで直に食べるけれど、乃依は猫舌だから小皿に移して箸で食べる。
期待せず一口。
カリッ
予期していなかった音に、乃依は目を見開いた。
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