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「ごちそうさまでした」
『府中焼き』の店を後にし、車は尾道へ向けて南下する。
何だか楽しみになってきているけれど、それを栄ちゃんに伝えるのも癪に障るので、乃依は素知らぬ顔で助手席に座っている。
尾道に着くと、お腹を空かせるため、千光寺やその周りの坂道を散策した。
「あー、尾道まで来て尾道ラーメン食わんなんてありえん」
「食べてもいいけど?」
「いや、本来の目的を見失ってはいけない!」
そんな会話をしながらたどり着いたお好み焼き屋さんでも、タイミングよく二枚のお好み焼きが仕上げの工程に入っていた。
「はい、どうぞ」
同じように目の前に移動してくる。
ふむ、見た目はやはりいつものお好み焼きだ。
でも、さっきの『府中焼き』との出会いがあるから、お好み焼きファンではない乃依と言えども多少のワクワクはある。
「ハードルが上がっとるけえね。ちょっとやそっとじゃ驚かんよ」
「まあ食べてみんさい」
小皿に取り分けたお好み焼きを自信満々で差し出す栄ちゃんを尻目に、一口ぱくり。
コリッ
んんっ?
これまた予期せぬ歯ごたえに、乃依はまたもや目を丸くした。
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