第3話 つがいの運命

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「ここから先にはアルファの方は入れませんから」  和美を送っていくと、コテージの入口で山形が待ち構えていた。 「随分だな」  荒城は文句を言おうとしたのに、和美はさも当たり前のように山形の腕にしがみついていく。 「ごめんなさい、山形さん」  甘える子犬のように和美が山形に、すがるのを見て、荒城は舌打ちしそうになった。 「バイト先のマスターには連絡を入れておきましたから、今日はおやすみですからね」  山形が、そう言って和美を奥に入れる。荒城の手から和美の服が入った紙袋を受け取りながら、山形が言った。 「GPSが、付いてますからね」  それを聞いて納得した。だから話を端折って言ってきたのか。和美がホテルにいて、ヒートを起こしていれば、なにが起きているのか理解ができるというわけだ。 「それと、オメガ保護法がありますから、そう簡単にことが進むと思わないでくださいね」  そう言って、山形は荒城に名刺を渡してきた。 「どういうつもりだ?」  名刺を受け取りながら、荒城は片眉を上げた。 「荒城さんですよね?和美くんのバイト先の近くのタワーマンションに、事務所を構えている」 「ああ、そうだよ」  こちらがしていることは、そちらもしているということらしい。公務員の癖によくやるものだ。 「既にご存知だとは思いますが、和美くんはこのコテージの預かりですから」  荒城は返事をしないでやっぱりに背を向けた。渡された名刺はそのまま胸のポケットにしまい込む。  荒城が出ると、扉に施錠される音がした。部外者は立ち入れないような、厳重な警戒だ。  ここにいれば、和美は安全に暮らせるのだろう。だが、荒城にとって和美は唯一なのだ。
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