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姉ちゃんのマリオは今までの中で抜群に似ている。
そう、コレがマリオや。
赤いツバのある帽子、そして何かのアルファベット。Ok。
口の上にモコモコのヒゲ。OK。
でっかい鼻。OK。
赤い服に胸まであるジーパン。OK。
父ちゃんが「オーバーオール」って言っとった。
体は、そうそう頭と体と足が同じぐらいで、ちょっとコロッとした感じ。 0K。
だけど、何かが違う。違うんや。
……目や。
このマリオ、目がキラキラしている。
そして、まつ毛がクリンクリン。
そや、姉ちゃんの漫画のキャラはみんなお目目がキラッキラやった……。
「姉ちゃん……目や、目が違う」
「えっ、そう? うーん。これで十分ちゃう」
「う、うん。でも、なんか、なんか」
「なに? なんか文句あんの?」
「ううん。でも……」
「あんたも自分で描いて見いや」
「エッ」
わいは、恐る恐る色鉛筆をとって描いてみた。
基本は姉ちゃんの絵を真似して描いて、目や、目だけ変えて……
そして出来上がったのは、黒丸の目をしたニッコリちゃんと言うかスマイルと言うか……
やっぱりなんか違うマリオが笑っていた。
「かわいいやん」
と姉ちゃんが呟いた。
「え、そう」
でも、マ、マリオ、マリオってどんなんやったっけ?
もう、訳分からへん。どんどん、どんどん、マリオがわいの前から遠ざかっていった。
わいの頭の中では、お目目キラッキラのマリオが颯爽とスキップして駆け抜けていったと思ったら、にっこりちゃんのマリオが下からニョキッと出て来て、土管にもたれかかったヒョロっとしたシャガール風のマリオじゃない誰かが遠い空を眺めていたら、向こうから赤い鎧武者の軍団が勇ましくやって来た。
「違う、違うんや、スーパーマリオはこんなゲームとは違うんやーー!」
「ええから早よ、その残った椎茸食べてパワーアップし」
母ちゃんが鍋を片付けながら言ってくる。
わいは、残った椎茸を持ち上げて、ハァとため息をついた。
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