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その日の晩。
うちでは家族会議が開かれたらしい。
スーパーマリオの事は母ちゃんが知ってたから、まあ何とかどう言うもんかは伝わったらしいけど(じっちゃんは?)。スーパーマリオの前にまずファミコンを買わなくてはいけないこと、そして わいにはまだファミコンは早いんちゃうかと言う事になったらしい。だから親からのプレゼントは違うもんやて、ガッカリ。
別にいいもん。サンタさんにお願いするもん。
と言う事で次の日、学校が終わって家に帰ったわいは、ひとまず今は画用紙にスーパーマリオのコースの絵を描いてみる事にした。チャラチャッチャラッチャ♪ チャ♪ と音楽を口ずさみながら、ブロックと土管、雲と草、木なんかを描いていく。描くと何となくそれらしくなってくる。
ええぞ、ええぞ。なんか楽しい。
1枚じゃ足らへんな。と言う事で画用紙を繋いでいく。さいわい家には画用紙がいっぱいあったから遠慮なく使う。1枚、2枚、3枚……10枚、11枚。リビングを通り越して廊下の端まで伸びる大作が出来上がった。最後のところにお城を描いてっと。完成や。
おおー。廊下に伸びた画用紙を見てわいはちょっと感動した。楽しくなって来た〜♪ でも、まだまだ、やっぱりスーパーマリオって言ったらドカンに入ってワープやろ、いろんなところに行けるから楽しいんや。わい、今度は海のコースを作ってみた。地下洞窟のコースも作ろう。この辺は、廊下の壁に貼っていく。クッパの城のコースはなかなか難しいな…… あんま上手く描けんかったけどまあ、ええやろ。山のコースも描いたろ、空のコースもええかも、お菓子のコースも描こうか、学校のコースなんてどうや、もう何でもええな楽しければ…… 世界が広がっていく。繋がっていく。どこまでも。地球の裏側までも。
「じっちゃんコース描いて」
「なんや?」
わいはじっちゃんの部屋に画用紙を持っていった。
じっちゃんに廊下のコースを見せて説明する。
「おーー、じっちゃんよう分からんけど、なんかワクワクするな。幸村も言っとった『夢を掴んだものより、夢を追っている者の方が、時に力を発揮する』と」
そう言ってコースをまじまじと眺めていくじっちゃん。
「主君のために死ぬのは武士の習い。よっしゃ任せろ!!」
こうしてしばらくじっちゃんは部屋に閉じこもった。
「あのー、一応スーパーマリオやで。分かってる?」
「……」
返事はなかった。
「ウワッ! なにコレ」
部屋から出て来たねーちゃんが、リビングで声をあげる。
「スーパーマリオのコースを作ったんや」
「ふーん」
とコースを眺めていくねえちゃん。
「で、マリオは?」
姉ちゃんに言われて、ハッと気がついた。そうや、マリオがおらんやん。
「そや、マリオがおらん。どないしょ」
「写絵でもしてきたら」
「なるほど」
写絵は学童保育の時に何回かやった事あるから任せといて。
でも肝心のマリオの元絵がないな……
その時、ガチャっと扉が開いて母ちゃんが買い物から帰って来た。
「ウワッ! なにコレ」
と姉ちゃんと同じことを言ってリビングに入ってくる。買い物袋をドカッとテーブルに置くとその中から塗り絵の紙を一枚取り出した。そこには何とマリオが描かれていた。
「はいコレ。なっちゃんに」
「ど、どないしたん?」
「薬局の前に小さい子向けの塗り絵の紙が置いてあって、マリオがあったから貰って来てあげたんや」
「あーー、ありがとう母ちゃん」
完璧やん。わいは、コースにそのマリオを切り取って入れてみた。
「あ、でも。でかい」
「プラ板にしたら」
姉ちゃんが提案してくれる。
「おおー」
こうして姉ちゃんと母ちゃんとのプラ板作りが始まった。わいは、マリオを写して描いて色を塗る。トースターで焼くのはまだ出来へんから、母ちゃんお願いや。トースターの中でマリオのプラ板がぐにゃりと歪む。やがて1/3ぐらいに縮んだマリオを電話帳に挟んで冷ます。そして出来上がったマリオは、丈夫で、色が濃くなって、キラキラ輝いているようやった。きれいに出来た、なんかすごい宝物が一つ出来た! そんな気分や。
姉ちゃんがクリボーを描く。クリボーやったらわいも描けるかなと、わいも描いてみた。
こうしてニッコリちゃん(スマイル顔)のクリボーが出来た。
姉ちゃんのクリボーは……
やっぱりお目目がキラキラや……
そして、なんかリボンつけたり、猫みたいな口のクリボーもおんで……
あ、母ちゃんもなんか描いてる。
「母ちゃんこれって……」
「これは椎茸、これはしめじ、舞茸、そしてコレが松茸ね」
「……なんでやねん」
そして、みんなの顔が、顔が、わいが描くニッコリちゃんとおんなじや。もうええわ、何でもありや!!!
そう思って、わいもニッコリちゃんのクリボーをさらにいくつか描いていった。沢山沢山クリボー作ってるうちに、なんか親近感が湧いてきた。出来上がったいろんなクリボープラ板。ニッコリちゃんの、お目々キラキラの、リボンやフリフリをつけたのも。なんか、作ったクリボー達の親になった気分や。
笑顔でみんなが見つめてくる。
か、かわいい…… この子たち。
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