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ゲームは作ってる間がムッチャ楽しかった。実際に完成したゲームをやるのは、敵が動かんからなー、それに作るので疲れ果てたから、なんかイマイチやった。
でも、作ったコースと、プラ板で作ったマリオと、にっこりクリボーは宝物や。特にクリボーたちが可愛い。わいは親になった気分でニッコリクリボーたちとコースを何度か探検した。ドカンに入ってワープして、海に行き、空に行き、山に行き、地中にも、クッパ城にも行った。
そして、最大の山場はじっちゃんコースや。恐ろしい針山の地獄があったり、ハスの花咲く天国があったり、敵か味方かわからん赤い鎧武者が出て来て、そして最後は温泉があってみんなで温泉に入って体力を回復するというまさに異世界。マリオってすごいな。土管でこんなとこにも繋がっとんや。
ええな、このワープする土管。いろんなところに行ける。だからスーパーマリオって楽しいんやな。
わい土管はないけど、まあ、でも、じっちゃんとこ行けばじっちゃんの異世界に行けるし、父ちゃんとこ行けばコレはコレでまたヨーロッパ風の異世界に行けるし、母ちゃんとこ行けばリアルな不思議な世界に行けるし、姉ちゃんとこ行けばたまに怖いけどキラキラお目々のメルヘンの世界に行けるし、学校に行けばみんなと遊べる世界に行けるし、布団の中で絵本読めばその世界に行けるし、なんかしょっちゅうワープしてる気するわ。
でも、もっともっと色々みてみたいなー。もっともっと色んなところに繋がればええのに。いつか、地球の裏側までも繋がればええのに。きっと楽しいで。もっともっと繋がって、もっともっと広がって……
その夜、わいは夢を見た。わいはマリオになっていてコースを進んで行った。クリボーがやってくる。お目目がキラキラしている。見つめてくる。にっこりしている。
「あかんやん。こんなん踏めへんわ」
そして、次から次へとお目目キラキラクリボーが押し寄せてくる。
なかにはシメジや椎茸、松茸もいる。
「待て待ってくれ」と言いながらわいは逃げた。
コースをどんどん走って逃げる。その後をにっこりクリボーがどんどん増殖しながら迫ってくる。そしてとうとうクリボーたちに囲まれてしまった。
「わ、わいらは友達やろ」
お目々キラキラクリボーが、さらにニッコリして何かを差し出してくる。みると、お皿の上にキノコ炒めが載っている。
「えっ?」
椎茸やシメジもそれぞれ自身の炒め物を持っている。
「やめろ、やめてくれー」そして、わいの口にキノコ炒めをねじ込んでくる。ニッコリしながら……
「なんて夢や……」
ワイは寝汗をかいてハッと目覚めた。
「なんて恐ろしい…… これ、ホラーゲームや」
ここに新手のホラーゲームが誕生した。ような気がした。
まあ、そんな、こんなで、スーパーマリオへの憧れも一息つき。忘れた頃にクリスマスがやってきた。
サンタさんはワイが前から欲しいって言っていた、ローラースケートを持ってきてくれた。
「ありがとう。サンタさん」
そして、何故か、プラ板で作った赤い服のヒョロっとした男のキーホルダーがあった。やけに細長くヒョロっとした体、ダリのようなちょび髭、青白いシャガール風の顔、赤いセーターにブルーのジーパンの男。
「誰? もしかしてやけどマリオ?」
男は返事を返してくれへんかったけど、手にはワイングラスを持ってニヒルに笑っていた。
「サンタさん、マリオ描くのあまり上手やないな」
とわいはポツンと呟いた。
Fin
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