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「本当にもう、兄弟みたいなものなんですって。カナさんは? ご兄弟とかいないんですか?」
言ってから、ここは『お付き合いしている人はいないんですか?』と問うべきだったと反省をした。
「え? あ、はい。いえ、前はいたんですけど……。実は私、子供の頃に事故で両親と姉を亡くしてまして。叔父が引き取ってくれたんです」
「叔父さんが?」
「ええ。父の弟にあたる人です。でも……」
「でも?」
「叔父と父とは、異母兄弟なんです。祖父が他の女の人との間に産ませた人が叔父さんで」
「へえ?」
「他に身寄りがいなくって……。でも自分を捨てた人の孫なんて、恨まれたっておかしくないのに、叔父は私をとても大切に育ててくれたんです。私のために結婚もしないで、ずっと独り身を通して。最近は時々具合が悪そうな時があって、心配で……って、やだごめんなさい! お客さんにいきなりこんな話をするなんて、私」
ハッと真正面からこちらを向いて、すまなそうに頭を下げた。
「そんな、ここではお客さんなんて思わないで下さいよ。──あ、待ち合わせの人ってあの人?」
ジャケットとデニムをラフに着こなした男が公園の入口からこちらに手を振っている。
「あっ……」
カナが慌てて立ち上がった。リラとタクは気付かれぬようにそっと公園を抜け出した。
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