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マッサージ②
「また当サービスをご利用くださりありがとうございます」
初めて会った時と同じように九條さんと並んでベッドに腰掛けながら俺はそう言って頭を下げた。
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前回と同じホテル、同じ部屋、同じプレイ時間に同じ要望で九條さんから予約が入ったのは1週間前。前回の利用から1ヶ月が経っていた。
オニーサンとまた話したくて、と笑う九條さんは相変わらず非の打ち所のない綺麗さだった。
ありがとうございますと返し、そういえばと取り出した仕事用のスマホの画面を九條さんに向けた。
「九條様が前回教えて下さったマッサージチャンネルの動画、私もいくつか観たんです」
九條さんに限らず、普段からプレイ中に聞いたオススメのものは動画でも本でもネットサイトでもひと通り目を通すようにしていた。
会話のネタになるだけでなく場合によっては応えられる要望の幅も拡がる。
「え、わざわざ?」
「マッサージの動画って今まで観たことがなかったので面白かったです。九條様はこのチャンネルの中でどの動画が特にお好きとかありますか?」
俺の問いに九條さんは「………………強いて言うならこれかな」と恥ずかしそうに答えた。
動画を何本か観るうちに背中のスクラッチマッサージというのは手で行うだけでなく、孫の手や櫛など道具を使うものもあるのだと知った。
が、九條さんが指さしたのは道具を一切使わず手だけでマッサージを行う動画だった。
そんな気はしてた、という言葉を飲み込み、そうなんですねと相槌を打つ。
九條さんはこれ以上自分の恥ずかしい部分を深掘りされたくないと思ったのか「そういえば」と早口で話題を変えた。
「この逆向きに座って体をもたれかけさせられる椅子ってどこに売ってるんだろうね」
体勢的に楽そう、と言って九條さんが指すのは動画内に出てくる背もたれの無い椅子だった。背もたれの代わりに腕を置くところと頭を置くところがあり、通常の椅子に座る時とは逆向きのような格好で動画内のモデルは座っていた。椅子というより器具に近い印象がある。
売ってるの見たことある?と聞かれ俺は首を横に振った。
「…………同じような椅子はこのホテルにはありませんが、この動画のようにもたれかかる体勢がご希望でしたら私にもたれかかって頂いても大丈夫ですよ」
少し失礼しますね、と一言声をかけて軽く抱きよせた。
九條さんはえっと驚いた声を出したものの抵抗や嫌悪するような感じはなく、そのまま抱き合うような格好になる。
「背中ならこの状態でもマッサージ出来ますし、力抜いてもたれて頂いて結構ですので」
いかがでしょう?と尋ねながら背骨に沿う形で背中を撫でると腕の中の九條さんの身体がビクッと反応し俺の背中にまわす腕に力がこもった。
「────このまま続けさせて頂きますね」
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「はっ……ぁ…………!ふっ………………」
抱き合っているため顔は見えないが首すじにかかる熱い吐息で気持ちよくなっているのはわかった。
「速いのがお好きでしたよね」
撫でるような触り方から、カリカリカリカリッと指先で揉むような触り方に変えると一層声が大きくなった。
「あ、ああっ……!それ、きもちいっ…………!」
九條さんが俺のシャツをぐしゃっと掴む。
身体を擦りつけるようにもぞもぞ動かしているのは無意識のようなので敢えて指摘はしなかった。
「どのあたりを触られるのが一番気持ち良いですか?」
背中とひと言でいっても範囲が広い。
腰のあたりから順に上にあがっていくように触っていく。
「っあぁん…………っ!そこダメっ………!よわいぃっ……!」
最も気持ち良いのは肩甲骨のあたりらしかった。
「駄目なんですか?やめましょうか?」
手を止めてわざとそう聞いてみる。
「はっ……あ、やだっ……やめないで………!」
もっと気持ち良くなりたい、と言い九條さんはぎゅっと俺の背中にまわした腕に力を込めた。
「承知致しました。いっぱい気持ち良くなってくださいね」
そう言って俺は再び九條さんの背中に指を這わせた。
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