36人が本棚に入れています
本棚に追加
プロム
その三年後、私は十年生になり高校に上がっていた。でもその時、まだ十六歳だった暁人は飛び級で十二年生、高校の最終学年になっていた。彼はこの学校始まって以来の秀才と呼ばれていたの。そしてスタンフォード大学の宇宙工学科へ首席合格をしていた。倍率三十倍の大学の首席だよ。本当に凄いよね。
それと私達家族は父の出向期間の終了に伴い、この年で帰国する事になっていたの。だから暁人とはもう直ぐお別れ……。寂しいなぁ。
暁人の卒業式が迫っていたある日、私のMathのクラスに暁人がやって来た。
「暁人、どうしたの?」
彼は無言で小さなカードを渡してくれる。
「これは?」
「いいから、カードを裏返してみて」
首を傾げながらカードを裏返すとそこには
『PROM』と赤い文字で書かれている。
「えっ? プロム。私を?」
みんなはプロムって知ってる? 高校の卒業ダンスパーティのこと。参加はカップルって決まっていて、男子が意中の女子を誘うの。
「君と参加したいんだ。どうかな?」
思いがけない提案に驚いて彼を見つめる。
「うん、暁人……。ありがとう」
その瞬間、暁人が『Yes!』と言ってガッツポーズをすると、飛び跳ねながらクラスを出て行った。私がボッーっとしていると周り中を女子達に囲まれる。
「アナ、アキトにプロムに誘われたのね! おめでとう!」
みんなのおめでとうの合唱に私は嬉しくて泣いちゃった。
最初のコメントを投稿しよう!