high jump!!

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 145センチ、150センチ、……俺と高田くんはその後も順調にバーをクリアしていき、ついにバーの高さは165センチに到達した。ここまで残っている人数はわずか四人。目標の三位入賞はもう目の前だ。  残っている中には高田くんもいる。ここまで二人ともノーミスだ。だけどお互い、どんどん余裕は無くなってきている。俺はここらあたりが勝負になると踏んで、気合を入れるため太腿をグーで何度か叩いた。 「715番」  俺はゆっくり立ち上がり助走位置に向かう。ちらりと横目で高田くんの方を窺うと、彼は見たことも無いほど熱のこもった視線をこちらに投げかけていた。 「師匠。跳んで見せてくださいよ」挑発的な目がそう語っている。俺ははぁっと息を強く長く吐きだした。  負けたくない。負けたくない。絶対に、勝つ。  頬が緊張でひくひくと引き攣る。喉が渇いてしょうがない。経験したことのない高揚感が身体を包み込む。 「行きます」  たっぷりと間を取って、気力が充実したその瞬間、俺は走り出した。ターン、ターンとリズムよく地面を蹴っていく。が、地面からの反発力が上手く得られない。なぜ? 景色が後ろに流れてゆく、そのスピードがいつもより若干早い。そこでようやく気付く。まずい、上体が前に突っ込んでいる!  バーはもう目の前だった。止まることも叶わず、そのまま踏切に移行する。案の定、身体は上手く浮力を得ることができず、腰からバーに激突した。審判が赤旗を上げる。  項垂れる俺の耳に、審判の「149番」という無機質な声が届く。続いて「行きます」という高田くんの声。  恐る恐る顔を上げた俺の目に映ったものは、白い旗と、大きくガッツポーズを作る高田くんの姿だった。
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