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二人で初めて旅行の話が出た時から、私の頭の中は夜のことで一杯だった。誰にもこんなこと相談できないし、私ってエッチなのかなと真剣に悩んだ。
旅の行先を考えている時の楽しい時間。両親に彼氏と旅行に行くと言えずに、渉には小遣いをあげて口裏を合わせてもらったっけ。
「あの時と味は変わらないのかな?」
哲也が食べたコーヒー味のソフトクリームを食べる。少し味見をさせてと言った私に、哲也は意地悪をしてくれなかった。むくれた私の頬をつねって「可愛いほっぺ」と言った。
「こんな味をしていたのね」
自然の匂いを嗅ぎ、澄んだ空気を吸い込む。軽井沢は、あの時と何も変わらなかった。
チェックインの時間になり、私は宿泊先のホテルに行く。
「予約をした桜庭です」
「ようこそお越しくださいました。ただいま予約を確認いたします」
ホテルのホームページから予約を入れた。宿泊サイトから予約をした方が安く泊まれることも分かっていたが、どうしてもホームページから予約をしなければならない理由があった。
「桜庭様、承っております。ご指定の107号室をご用意しております。こちらがキーになっております。どうぞごゆっくりとお過ごしくださいませ」
「ありがとうございます」
10階の7号室。107。そこは私が初めて哲也と宿泊した部屋だった。空いていなければ、旅行のルート変更をすればいいと思っていたくらい、思い入れのある部屋だった。
部屋のカーテンを開けて、トランクから哲也の写真を出す。
「窮屈だった? 覚えてる? この部屋。また泊まりに来たんだよ」
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