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休み明けの出勤日、瑞穂は私の顔を見るなり、泣き出した。
「美緒……ごめん、ごめんね……」
泣いて謝る瑞穂は、私が休んでいた数日間で、やつれた顔になっていた。
「私こそごめん」
結婚を控えて、幸せな顔をしているはずの瑞穂に、悲しい顔をさせてしまった。
毎日見る自分の顔はよくわからないけど、もしかして哲也がいなくなってからずっと、私もこんな顔をしていたのだろうか。
こんな顔をしていたのなら、両親や渉、おじさんもおばさんも幸せではなかっただろう。
一ノ瀬さんのおかげで、周りを見る余裕まで出来た。
「瑞穂がああ言ってくれなかったら……背中を押してくれなかったら、今はなかったわ」
「もう大丈夫なの?」
「哲也があって私だったの。忘れられないって一ノ瀬さんに言ったし、一ノ瀬さんは当たり前だって言ってくれたの」
「私が選んだ一ノ瀬さんだもん、そう言うのは当たり前よ」
まるで自分が引き合わせたように言ってくれるじゃない。
「瑞穂が選んだんじゃないんだからね。そこは間違えないで」
「はい、はい」
いつも通りの瑞穂に戻ってくれて良かった。
瑞穂と言い合いになって休みを取ってしまった為に、瑞穂は自分を責めて大変だったと、渉から聞いた。
前に進むために、私は全ての連絡を絶って、哲也との思い出巡りの旅に出た。
瑞穂は私の顔を見て、本当に良かったとまた泣いた。
「それはそうと、ポスターの話題で持ちきりね」
事務所に貼られたポスターを見て、瑞穂が言った。
あの時のポスターが仕上がって来ていた。
唐沢浩一は出来上がりの良さに、一ノ瀬さんにもう一度モデルになれと、猛烈なアピールを掛けている。
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