眠れない夜をかぞえて

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そんなキザなセリフを、さらりという一ノ瀬さんが憎くたらしい。 「一ノ瀬さん、最高に素敵ね。ほんと、カッコいい」 「そうでしょ?」 「謙遜しないわねえ」 「当たり前じゃない。カッコいいもん」 モデル時代の写真を見せてもらった。 ちゃんと製本して整理してあった。 「やっぱり作品として捨てられなくてね。ナルシストかな? 軽蔑するか?」 「まさか!! 仮に捨てていたら軽蔑したかもね」 「そっか、安心した」 どれも本当に素敵で、唐沢さんじゃなくてもモデルに戻って欲しいと思うだろう。 「あんまり見るな、恥ずかしいだろ」 「素敵です、本当に」 「生身の俺が隣にいるだろう?」 と言いながらキスをする一ノ瀬さんは、とっても甘い。 厳しいところばかりを見てきた私には、恥ずかしすぎる甘さ。 モデルを引退した理由は聞いていないけど、一ノ瀬さんが私の過去を聞いたりしないのと一緒で、私も一ノ瀬さんの過去を聞いたり、気にしたりしない。 私たちには今が一番大切だから。 「この時、何を話していたの?」 ポスターの表情から瑞穂は、そのように読み取った様だ。 まったく勘が鋭くて侮れない女ね。 「教えない」 「ケチ」 「あ、それから、結婚式の相談はもう受けないから、誘ったりしないでね」 「え!? なんで!?」 「デートで忙しいのよ、私。休みに仕事が入ったら、ちゃんと出勤しなさいよ? 今まで休ませてあげたんだから、よろしくね」 瑞穂は呆気に取られていた。 冗談も言える、こんな毎日がとっても幸せだ。
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