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「どこへ行くんです?」
「駅のホームです」
色をなくした目で瑠海を見上げる心。嫌な予感が瑠海の中で込み上げてきた。
「何をしに?」
「自殺するんです」
予想は的中した。しかしここで慌ててはいけない。瑠海は自分を落ち着かせて心に問いかけた。
「どうしてそんなことを?」
すると、心は自嘲気味にぽつりとこぼした。
「私、お母さんが死ぬ直前まで毎日喧嘩してたんです。お母さんはいつも私に勉強しろとか片付けろとかうるさくて……それで、あの日もお母さんに叱られて……私、思わず『あんたなんかいなくなれ』なんて言ってしまった……」
彼女の目から1滴、また1滴と涙がこぼれた。
「そしたら、本当に死んじゃった……お母さんに酷いこと言ったから……! 私のせいなの……うっ、早く、早くお母さんのとこへ行って謝らなきゃいけないの……っ!」
嗚咽混じりの叫び声が木霊する。後悔と悲しみ。負の感情が彼女を締め付けている。そんな彼女の背後には、不気味な色をした悪夢が愉快そうに笑っている。瑠海は心底腹立たしい気持ちになった。
「日高さん……」
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