悪夢封印

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耐えていた涙がまた溢れ出す。あらゆる感情を全て吐き出すかのように。もしかしたら、彼女は現実でも母親との関係に悩んでいるのかもしれない。夢と現実は連動している。悪夢は彼女の悩みにつけ込んできたのだ。そして悪夢は、苦しむ彼女の後ろで上機嫌に笑う。 「やめて……お願い……」 必死に言葉を紡ぎ出す。 「……だから、離して!」 「離さない!」 初めて聞く瑠海の大声に、心は目を大きくさせた。彼の瞳は1秒たりとも心から逸れない。 「あなたは1人じゃない」 一呼吸置いた後、瑠海は囁くように言葉をかけた。 「俺がいる」 心は口を開けて瑠海を見つめた。彼に圧倒され、身動きさえ取れない。 「あなたを必要としている人間が、ここにいる。あなたが死んでしまったら、俺は嫌だ」 まさか素性も知らない男にそんなことを言われるなんて思ってもいなかったのだろう、心はただ呆然と立ち尽くしている。瑠海はそのままの表情で、再び唇を開いた。 「それに、あなたのために料理を作ってくれる……あなたとの写真を部屋に飾り、絵や賞状を大切に保管している……。あなたのことが大切じゃないなら、こんなことはしない」
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