悪夢封印

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彼女の涙が悲しみから少しずつ変化した。絶えず涙をこぼしているが、その目の色は最初と違い、光を帯びている。瑠海は手を差し出し、そっと心の頭に乗せた。 「大丈夫」 「長谷川さん……っ」 その瞬間、心の背中から黒い物が離れていった。悪夢が彼女から突き放される……瑠海の言葉で彼女の気持ちが変わったのだ。そして景色が溶けていき、目の前にいる心や部屋が消えていった。 たどり着いたのは、再び真っ暗な世界。そこには心はおらず、瑠海と悪夢のみだった。悪夢は歯をむき出し、苛立ちを露わにしていた。 「くそっ! オレがあの女を支配しようとしてたのに……! あともう少しだったのによ……!」 「彼女を苦しめるのは終わりだ」 瑠海はそう言うと、背中に備えている剣を抜き、悪夢に突きつけた。 「お前の好き勝手にはさせない」 そのまま剣を悪夢に刺し、体ごと貫いた。瑠海は力を込め、悪夢を睨みつけた。 「うぎゃぁぁぁああああ!!」 断末魔とともに、悪夢は粉々になり剣の中へ吸い込まれていった。何も聞こえなくなり、黒い粒が全て吸収されると、瑠海は剣を鞘に戻した。 「封印完了」
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