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瑠海はブレスレットを唇に近づけ、いつもの台詞を口にした。
「長谷川瑠海、悪夢封印完了しました」
『はーいお疲れさーん』
緊張感のない声を聞きながら、瑠海は安堵の息をついた。
カーテンから光が眩しく差し込んでくる。それを浴びながら、心は目を覚ました。
「気がついたか?」
昼近くになっており、部屋は暖かな空気に包まれていた。
「長谷川さん……」
心はゆっくりと体を起こし、少しの間部屋の中を目で見回していた。もう母親の遺影はなく、線香の香りもしない。
「夢を、見たの……。最初はいつもと同じ感じだったんだけど、長谷川さんが止めてくれて、自殺せずに済んで……その後は記憶がないけど、こんなに眠れたのは久しぶり……」
布団を強く掴み、震える声で心は続けた。
「毎朝起きたらお母さんと仲良くしようって思っても、いざ怒られると毎回喧嘩になって、酷いことばかり言ってしまって……。でもね、長谷川さんが言ってくれたの、長谷川さんもお母さんも私を必要としてくれているって。そしたら、何だか急に安心して……」
心の目には大粒の涙があった。しかし、夢の中とは違って温もりのあるものだった。
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