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「私っ、今度こそお母さんと仲良くするっ! 勉強もして、お手伝いもして……」
途切れ途切れの声をあげ、心は瑠海の胸に顔を押し付けた。
「きっと長谷川さんのおかげ……ありがとう、ありがとうっ、長谷川さん……!」
自分の胸で泣きじゃくる心に少し驚いたが、すぐに彼女の頭に手をやった。彼女の体温は温かく、夢ではなく現実なのだと感じさせられた。
悪夢封印は簡単なものではない。依頼人の気持ちに触れることで、辛い部分も多く見てしまう。だが、そっと手を差し伸べることで誰かの気持ちを楽にしてあげられる。生きる理由になる。それが悪夢封印という瑠海の仕事であり、使命でもあり、生きがいでもあるのだ。
「俺は背中を押しただけ……日高さんの強い気持ちがあったからこそ、乗り越えられたんだ」
彼がそう話すと、心は顔を上げた。そして、ふわりと柔和な笑みを浮かべた。彼女と出会って初めて見るものだった。それにつられて、瑠海も慣れない笑顔を見せた。
優しい光の空間に抱かれているのもつかの間、急に部屋のドアがガチャっと音を立てて開いた。
「心? どうしたの?」
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