悪夢封印

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「初対面の大した話もしてない男に惚れないだろ。お前こそ毎回依頼人の女を口説いてるじゃないか」 「ひどーい! 口説いてなんかないもん、優しい対応をしてるだけだもーん!」 少年は頬を膨らませていじけた。表情豊かな彼は、1時間で喜怒哀楽全て見せているのではないかと言われている。あまり表情を変えない瑠海とは対照的だ。この少年の名前は風上宏紀(かざかみ・ひろき)。瑠海の近所に住む幼馴染で、S2FNの一員でもある。 瑠海と宏紀が掛け合いをしていると、中年の男がそこへ入った。 「まあまあ、2人とも女の子が大好きって結論でいいじゃないか」 「隊長までそんな……2人ともって、自分も入るんですか……」 男にまで笑われ、あまり納得のいかなさそうな顔をする瑠海。隊長と呼ばれたこの男はS2FNの代表であり、創設者でもある。その辺にいるような見た目ではあるが、実は悪夢封印の方法を開拓したうちの1人であり、業界では有名な研究者である。 「それにしても、今回もなかなかいい出来だったよ、長谷川くん」 隊長は目を細めて瑠海を褒め称えた。 「あ、いえ、それほどでも……」
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