悪夢封印

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今までほとんどの依頼人に同じような質問をされてきたため、一連の流れの説明は慣れている。だが、ほぼ全員がすぐには納得しない。あまりにも実感がわかないから無理もない。 瑠海がひたすらハンバーグを食べる中、心はスプーンをそっと置き、ややうつむき加減で話した。 「私、ここ最近毎日お母さんが死んじゃう夢を見るんです」 その一言を聞き、瑠海は箸を止めた。 「それで、私はひとりぼっちになって……気がついたら私は自殺を決意して、飛び降りて……そこで毎回目を覚ますんです」 だんだんと心の顔が引きつっていった。その表情から、毎日恐怖と疲労に苛まれていることが瑠海には伝わった。 「いつもいつもそんな夢を見て……寝ても寝ても同じ夢ばかりで疲れてしまって……寝るのも怖くて……」 そう言うと、心は唇を強く噛み締め顔を勢いよく上げた。 「もう何でもいい、お願いします、こんな悪夢を止めてください……!」 今にも泣き出しそうな顔で瑠海に懇願する心。藁にもすがる思いなのだろう、怪しげな団体に依頼するほど悪夢に苦しんでいるのだ……瑠海は真顔で頷いた。 「わかりました。悪夢封印、させていただきます」
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