悪夢封印

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「はい、それも大丈夫です……」 真面目な性格をしている瑠海は、女性を相手に悪夢封印をする際、いつもこの確認をしている。 「その研究所までは電車で行かないといけないんですよね? 怖いんです、電車が……」 えっ、と瑠海が聞き返すと、心は小さな声をもらした。 「毎日駅のホームから飛び降りて、電車に轢かれる夢を見るから……」 力のない弱々しい声が瑠海の耳に入り込む。苦しみの中での決意を否定してはいけないと瑠海は小さく息を吐いた。 「承知致しました。それでは今夜、あなたの家に向かいます」 その夜、瑠海は心の家に行った。10階建てマンションの10階であり、部屋の中は整理されている。壁には写真や学校でもらったであろう賞状が飾られており、ごく普通の家庭に思えた。 「私の部屋はこっちです」 彼女の部屋まで案内され、なぜか足音を立てないように踏み入れた。女子らしいピンク色の部屋で、ぬいぐるみもいくつか置かれている。瑠海は新鮮な空気を感じた。彼の殺風景な部屋とは大違いだ。
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