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運命の王子様と婚約者の黒騎士様
その姿を視野に入れた瞬間、全身に電流が走った。
ああ、これが。
これが憧れ続けていた、"運命の出会い"なのね……!
この国随一の庭師が手掛けた、美しき王城の庭園。
緑を背負って咲き乱れる、かぐわしい白薔薇の数々を従えるようにして、その方は現れた。
「ここで何をしている」
瞬く星々から艶めきを写し取ったかのように美しい髪は、眠れぬ夜に見上げた空のごとき黒。
真っすぐに私を見つめる、澄んだ湖畔よりも深いコバルトブルーの瞳は少々懐疑的で。
けれどもそんな剣呑さすら、彼の威厳を飾る一つであるかのよう。
すらりと通った鼻筋の中央。
形の良い眉の根本が、黙ったまま声を出せずにいる私に不可解をありありと浮かべた。
「……茶会の予定はないはずだが」
低い声にはっと気づいた私は、慌ててドレスを摘まみ上げ、「失礼いたしました」と頭を垂れた。
ドキドキと跳ねる心臓から、なんとか意識を引き剥がす。
「ウィセル侯爵が娘のマリエッタにございます。ご挨拶が遅れましこと、お許しください。殿下」
そう。そうなのだ。
この方はここ、ジラール王国の皇太子であるアベル・ジラール様。
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