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「庭師が毎年丹精込めて咲かせてくれているのだが、俺はあまり、見に来てやれていなくてな。美しいと眺めてくれるのなら、この花たちも喜んでいるだろう」
ふと、花を見つめるその目元が優しく緩んだのを、私は見逃さなかった。
(ど、ど、どうしよう……っ!)
こんな、こんな感情知らない。
胸の内はとてつもなくバクバクと激しく暴れまわっているのに、心臓の中心が、キュウーッと締め付けられるような。
(やっと分かったわ。これが"真実の恋"というものなのね……っ!)
紛れもない。間違いない。
私をこんな気持ちにさせるアベル様こそ、私の運命のお相手!!!!
「これから帰るところだと言ったな」
え、と小さく零した私の声と、パキリと枝の折れる音が重なる。
驚愕に見開いた私の眼前に、見事な白薔薇が差し出された。
「時折、約束もなく訪ねてくるご令嬢がいてな。……疑ったこと、この花に免じて許してくれると助かる」
「~~~~っ!!」
――王子様っ!!!!!!
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