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不思議だわ。どうしてこれまで気づかなかったのかしら。
初めて言葉を交わせたから?
それとも、出会った場が夜会など公の席ではなく、私的な庭園だったから?
ううん、理由なんてどうでもいい。
大切なのは生まれて初めて知ったこの恋を、なんとしても成就させること……!!
(そのために私がすべきは――)
「ルキウス様! 私と婚約破棄してくださいませっ!!」
バーンッ! と勢いよく開け放った扉の先。
窓際に立ち外を眺めていたこの部屋の主が、手にしていたティーカップをソーサーに戻して振り返った。
ダイヤのごとく輝く銀の髪に、陽光を集めて閉じ込めた黄金の瞳。
均衡のとれたしなやかな体躯に纏うのは、私の想い人であるアベル様と同じ黒をした、王立騎士団の制服。
彼の名はルキウス・スピネット。
私の二つ年上の幼馴染で、五歳の時からの婚約者でもある。
ルキウスは私と目を合わせると、にっこりと、昔から変わらない柔和な笑顔を浮かべた。
「やあ、マリエッタ。何やらご機嫌ななめのようだね? 今、君の大好きなミルクたっぷりの紅茶を用意してもらうから、座って?」
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