姪の『おともだち』

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 姉が離婚し、実家に姪を連れて戻ってきた。  久しぶりに会った姪は絵を描くのが大好きで、いつもスケッチブックに何やら描き込んでいる。  それを覗くたび、いつも不思議に思うのだが、姪の隣に描かれている黒い線は何なのだろう。 「〇ちゃん、その黒いぐるぐるした線、何?」 「この子、〇の『おともだち』。いつも一緒だから絵の中でも一緒なの」  姪はにこにこ笑ってそう言うが、今も一緒たというその『おともだち』は私には見えない。  親の離婚で不安になり、精神的な支えを空想の中に作り上げたのだろうと思ったが、姉にそれとなく聞いたら、どうやら例の『おともだち』は、離婚の話が出る以前から存在していて、むしろそれが離婚の原因の一旦のようだ。  実家にいるのは身辺が落ち着くまで。姉はそう言っているけれど、姪と新生活を始めるに辺り、とにかくお金がいるから、今はたくさん稼がなければならないという理由で、家にはほとんどいることがない。  両親も、どちらもまだ働いているし、必然家には、学生の私と姪が二人二人きりという時間が増えた。  姪の世話をするのは嫌いじゃないけれど、最近、近くに何かがいるような気がしてならない。  たくさんたくさん描かれる『おともだち』の絵のせいで、暗示のようなものにかかってしまったのかな。  姉はきっと、これまでの生活でこんな思いをずっとしていたのだろう。その結果離婚することになったのだ。  だからといって、妹の私がそれを肩代わりする義務はない。  就活も終え、来年からは私も新社会人。それを機に家を出るつもりでいたけれど、仕事を始める前に一人暮らしに慣れるという名目で、今は、予定を前倒して実家を離れようと思っている。 姪の『おともだち』…完
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