0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
姉が離婚し、実家に姪を連れて戻ってきた。
久しぶりに会った姪は絵を描くのが大好きで、いつもスケッチブックに何やら描き込んでいる。
それを覗くたび、いつも不思議に思うのだが、姪の隣に描かれている黒い線は何なのだろう。
「〇ちゃん、その黒いぐるぐるした線、何?」
「この子、〇の『おともだち』。いつも一緒だから絵の中でも一緒なの」
姪はにこにこ笑ってそう言うが、今も一緒たというその『おともだち』は私には見えない。
親の離婚で不安になり、精神的な支えを空想の中に作り上げたのだろうと思ったが、姉にそれとなく聞いたら、どうやら例の『おともだち』は、離婚の話が出る以前から存在していて、むしろそれが離婚の原因の一旦のようだ。
実家にいるのは身辺が落ち着くまで。姉はそう言っているけれど、姪と新生活を始めるに辺り、とにかくお金がいるから、今はたくさん稼がなければならないという理由で、家にはほとんどいることがない。
両親も、どちらもまだ働いているし、必然家には、学生の私と姪が二人二人きりという時間が増えた。
姪の世話をするのは嫌いじゃないけれど、最近、近くに何かがいるような気がしてならない。
たくさんたくさん描かれる『おともだち』の絵のせいで、暗示のようなものにかかってしまったのかな。
姉はきっと、これまでの生活でこんな思いをずっとしていたのだろう。その結果離婚することになったのだ。
だからといって、妹の私がそれを肩代わりする義務はない。
就活も終え、来年からは私も新社会人。それを機に家を出るつもりでいたけれど、仕事を始める前に一人暮らしに慣れるという名目で、今は、予定を前倒して実家を離れようと思っている。
姪の『おともだち』…完
最初のコメントを投稿しよう!