徳は積むべし

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徳は積むべし

「猫です」  猫。ありかそんなん。  しかし画面には確かに黒っぽいトラ模様の猫が映っている。  これは……他の結果も全部見比べてから決めた方が……。  おみくじで粘るジジイになりかけた俺に、係が説明してくれる。 「とある国の首相官邸で飼われる猫のようです。  ネズミの捕獲長として迎えられ、真面目に勤めれば手厚く生活を保証されます。  定期的に健康診断を受け、周囲から親愛とおやつを与えられながら暮らします。  また、時折記事になったり、写真がネットに公開されたり、名前が歴代の猫と共に記録に残されたりもします」  積んでて良かった()(おこな)い!  アレだな? なんか高そうなソファでくつろいだり、偉い人について働く知的なお姉さんからおやつもらったり、お茶目なおっさんに可愛がられたりするやつだな⁉︎ 「次回の死後はあちらの国のルールに従って頂くことになりますが……他の結果もご覧になりますか?」  いや、他のアイコンはNとかNNとかばっかだったはずだ。  日本のNなんてたかが知れてるし、ここはSR一択だろ! せっかく出たし! 「かしこまりました。ではあちらで手続きをお願いします」  案内係に礼を言って、俺は次の人生——いや猫生に向かって歩み始めた。  だから、その後の呟きについて聞くことはなかった。
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