創作を趣味にしている友人との会話

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創作を趣味にしている友人との会話

 大学生が趣味を持つということは、時間とお金にそれなりに折り合いをつけながら、自分自身が満足できる程度に、本業である学業に支障がない程度に楽しむことが、最も重要なことであると、俺は思う。  そしてそれは、小説というモノを描きながら、自分のアカウントをネットに作り投稿する俺にも言えることだ。  しかし最近は、大学を卒業するためには、しなくてはならない最大の壁、卒業論文、に載せるための実験データを得るために、日夜、大学の研究室で実験に明け暮れている。  そしてそのせいで、まるでまともに作業することができない。  そう思い返しながら、俺は彼に言う。 「だからこの決断は、ある意味英断とも言えるモノで、俺は決してこれが、いわゆる『逃げ』だとは思わない」  そうひとしきりに自分の胸の内を、創作仲間である友人に話し終えると、その妙に言い訳じみていて、しかしそれでも面倒なプライドだけはあるような俺の言葉に、ありがたくもわかりやすい、愛想笑いを浮かべながら、頷いてくれた。  そして頷いた後に、手元にあったコーヒーを一口飲み込んで、彼は軽薄にも同意の言葉を添えてくれる。 「まぁ理系と文系だと、そこら辺の大変さはかなり違うようだから俺は知らないけれど、でも手島、お前冬コミはどうするんだよ。まさか作品出さないとかって言わないよな?」  加えて自らの身を案じながら。 「あぁ、それならもう出来ているから大丈夫、今度そっちに表紙ごとpdfのファイルにして送るから」 「あぁそう、それならいいや」  そう言いながら彼は、またコーヒーを口にする。  彼はまぁ、俺と同じような、創作を趣味にしている友人だ。  しかしながら、彼が作るのは小説ではない。  彼が作るのは、音楽だ。  彼は所謂、ボカロPという者で、自分で作詞作曲をしながらそれを自らの動画サイトのアカウントに投稿している。  楽譜どころか音符すら読めない俺でも、彼がそれなりにレベルの高い創作者であることは、作品を耳にすれば容易にわかった。  しかも彼は、それでいて俺の小説や、他の販売物の管理、販売まで行っている。   だから彼は、俺がしばらくの間執筆の活動を休むことを、少しばかり案じてくれるのだ。 「でも、どうせまたしばらくしたら、書き始めるんでしょ?」 「えっ?」  その彼の言葉に、少しばかり動揺した。  なぜならそのことについては、まだ何も、決めていなかったからだ。  だから俺は、暫く考えてから、それをそのまま言葉にする。  「まだ、何も決めてないな...」  
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