酒涙雨に誘われた再会

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 不毛な想像を消し去り、朝の身支度を始める。朝食の支度をしながら茉奈の保育園の準備もするので、時間との勝負だ。  子どもを産む前には想像もできなかった慌ただしさ。でも茉奈のいない生活は、人生は私にはもう考えられない。  茉奈を起こし、オムツを換えて着替えさせる。 「かぁーいー」 「うん、可愛いね」  チェック柄のワンピースはお気に召したらしい。自分の服をじっと眺めてこちらにアピールしてくる。  やっぱり女の子なんだなぁ。  柔らかい髪に触れ、頭を撫でる。この髪質は、父親譲りかもしれない。  苦笑して茉奈と食卓についた。食パンに野菜ジャムを塗ったものとヨーグルトとバナナ。茉奈の好きなものばかりで彼女はぺろりとたいらげていく。その食べっぷりは見ていて気持ちがいい。  ようやく梅雨が明けて七月に入り、これからはプールの季節だ。先週、茉奈の水着を買いに行き、来年も着られるようにと少し大きめを選んだけれど、どうだろう。  一年前を考えると、信じられないほど大きくなった。言葉を発して自分の足で歩いているのだから。  軽く週間天気予報を確認すると、どうやら明日から天気は下り坂で七夕は降水確率が高くなっている。それは残念だ。茉奈はプールができず、織姫と彦星は会えないのだから。  酒涙雨(さいるいう)になるかな。  七夕の日に降る雨のことで、織姫と彦星が別れを惜しむ際に、もしくは会えずに悲しんで流す涙の雨と言われている。
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