1-13.Nightmare:cold autumnal wind

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1-13.Nightmare:cold autumnal wind

 木枯らしが吹きすさぶ。  白いプラスチックの塊が、寒さに耐え兼ね分解。  細かな立方体となり、枯れ葉ように飛び交う。  それが頬に当たって擦り傷。流れ出るは青い汁。  唇についたそれをぺろりと舐める。   味はなかなかに悪くない。  ただ、寒い。ただただ、寒い。 「青くーん!」  やかましい声。背中に重み。 「寒いねー。こうやってくっついたらあったかいねー」  そうやって俺の背に身体を密着させ、頭を擦り付けてくる赤。  地面に青を沸かし触手沼。  飛び出す触手が赤の頭を飛ばす。  降り注ぐは赤い汁。  それでもその離れない。首なしの身体が離れない。 「うへへ、解放するとでも思ったぁ?」  飛んだ頭がひとりでに話す。その甘えたような声に肌が粟立った。  俺は即座に触手に変形。蛇が如く赤の腕から抜け出す。 「ちぇ、もっと触れ合いたかったのに」  そういった赤の腹の中央をぶち抜く。  木枯らしがごぉっと音を立てて通り過ぎた。  白い立方体が凶器となって飛んでくる。  俺は人型に戻り、触手を沸かす。多量に沸かす。  そして、己を中心としたドームを作った。出入り口のない触手のかまくら。  中は真っ暗。全くもって構わない。  これで寒さにも立方体にも赤にも煩わされることはない。  最高の暇が楽しめるのだ。  暗闇の中で悠々と床に転がる。  と、どこからかパチパチと音がする。背中がぞわぞわする。  触手の中に閃光が投げ込まれた。  眩さにくらんだ目。逃げきれない。  俺はそれをまともに受ける。腹に穴が開く。青い汁が流れ出す。  触手のドームは崩壊。俺は腹を復元。 「あは、出てきた」  嬉しそうに笑う赤を触手で囲む。呑み込む。締め上げる。  赤は風船のように爆発。回復。  閃光の刃をこちらに向ける。  俺はそれを八割がた打ち落とし、残り二割は被弾。額に穴が開く。  その間も木枯らしは吹き荒れる。  白いプラスチックが舞い上がる。  赤い閃光が地を這う。  青い触手が空を切る。  トリコロールの喧嘩模様。  勝敗の決定は案外、あっさり。 「あ」  俺と赤は声を揃えた。  一段と激しい木枯らし。それに煽られ、ビルサイズのプラスチックがこちらに倒れ込んできた。その勢いといったら。  あえなく俺は下敷き。もちろん赤も下敷き。  二人でどろりとした液体となり、プラスチックから這い出す。 「くそが」  俺が悪態を吐くと、赤がにこりと笑った。 「ねえねえ、青くん。まだ寒い?」  そういえば寒くない。  俺の答えを待たずして、赤が言う。 「身体、あったまったでしょ?」  なるほど、そのために喧嘩を吹っかけてきたのか。  乗せられた。   そんな自分に苛立って、寒くもないのに身体を震わせる。 「まだ寒い」 「え、マジで」  赤の顔が引きつる。  俺は笑む。 「第二ラウンドだ」 触手を蠢かせ、赤に絡みつける。  その身体を限界まで締めあげる。  ぱぁんと音を立て、赤い汁が真っ白な床に飛び散った。 【13.Nightmare:cold autumnal wind END】
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