1悪役令嬢の息子、故郷へ帰る。

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1ー2 ファーストキス  どうしてくれんだよ、この状況!  俺は、心の中でお袋に悪態をついていた。  悪役令嬢って、イメージぴったり過ぎてびっくりだよ!  「何を考えている?セツ」  おっさんは、俺を凝視していたがやがて俺の目の前になんだか知らないが黒い小さな石ころのようなものを差し出してきた。  「これが何かわかるか?呪われた御子よ」  はい?  俺は、じっとおっさんの白い指先に摘ままれた丸い黒い石を見つめてから、再びおっさんのことを見上げた。  おっさんは、何かを期待する様子で俺を見つめているので、俺は、焦っていた。  えっと、この場合、どう答えるのが正解なんだ?  俺は悩んだ末におずおずと口を開いた。  「ええっと、石、ですか?」  「違う!」  おっさんが即否定してから憐れむような目で俺を見てきたので、俺は、むかっとしておっさんを睨んだ。  おっさんは、そんな俺を鼻で笑うと告げた。  「これは、魔物の核、魔核、だ」  「魔核?」  俺が聞き返したのをおっさんは、受け流してニヤリとニヒルな笑いなんか浮かべてやがる。  ちっ!  俺は、舌打ちした。  だから!  なんのことか、ちゃんと説明しろよ!  あと、人の話しはちゃんと聞け!  そんな俺の心の叫びが届いたのか、おっさんは、やっと説明を始めた。  「これは、あらゆる魔物の生命のもととなる命の谷の石だ。全ての魔物が体内にこの石を持つ。いわゆる宝玉というものだ」  なんのことだよ!  俺は、さっぱり理解できなくてただおっさんのことを見上げていた。  おっさんは、俺の顎を掴むと自らの口へとその石を含んだ。  あぁあ。  そんなもの食って。  俺は、ぼんやりとおっさんを見て思っていた。  よっぽどの食糧難なのか?  腹を壊さなきゃいいんだが、と俺が考えているとおっさんがにやっと笑って俺に顔を近づけてきた。  いや、近いって!  俺が顔を背けようとするのを両手で包み込むようにして固定すると、おっさんは、あろうことか俺の唇を奪ってきた。  はいぃっ?  驚きに言葉もでない俺の唇をわって、何かが俺の中へと押し込まれてくる。  「うっ・・んぅっ!」  俺は、もちろんそれを拒もうとした。  しかし、その何かは俺の中へとおっさんの舌と共に侵入してきた。  なんか。  おっさんは、舌先でそれを俺の体内へと押し込みつつ俺の口内をなぶっていく。  ごくん。  俺は、おっさんの唾液と一緒にそれを飲み込んだ。  というか、飲み込まされたんだよ!  ああ。  俺の脳裏をいろんなものが駆け巡っていった。  小学校では、俺は、結構もてていた。  中学では、初めての彼女もできた。  だけど、それからは、なぜか、まったくモテなくなって。  童貞のまま20歳になってしまった。  俺、悲しすぎるんじゃね?  「ふっ・・案じることはない、セツよ」  おっさんがどや顔で俺を見下ろしていたが、俺の頬をそっと撫でると再び顔をよせて俺の唇をぺろっと舌で舐めた。  「な、何す・・」  俺は、怒りにふるふると全身を震わせていた。  俺の・・俺のファーストキスがこんなおっさんに奪われちまったなんて!  一生の不覚だよっ!
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