1悪役令嬢の息子、故郷へ帰る。

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1悪役令嬢の息子、故郷へ帰る。

1―1 断罪から始まる異世界転移ですか?  「セツ・グレイアム、お前を断罪する!」  はい?  俺は、突然そんなことをのたまわった男のことを見上げてあんぐりと口を開けていた。  いや、いや、いや、ちょっと待ってください。  俺、今、この世界にきたばっかなんですけど?  俺に理不尽なことを言ってきた男は、青みがかった銀髪を肩まで伸ばした背の高いがっしりとした美中年だった。  理想のお父さん、いや、上司か?  そんなランキングが異世界にあるなら、きっと上位に入ること間違いなしという感じのおっさんだった。   きっと優秀な人に違いない。  だが、その冷ややかなアイスブルーの瞳は、今は、俺を虫けらを見るように見下ろしていた。  「えっと・・」  俺は、この美中年の言った言葉を頭の中で繰り返していた。  『お前を断罪する』  そう、このおっさんは、言った。  うん。  俺は、首を傾げた。  どういうこと?  俺、ほんとに今、この世界にきたばかりなんですけど。  「あの、ダンザイってあの断罪のことですか?」  俺は、その男に尋ねた。  おっさんは、俺に向かってバカにしたように頷くと顎をしゃくった。  「こいつを取り押さえろ」  「なんで」  言いかけた俺を急に両脇に立っていた2人の屈強な鎧の男たちに両腕を掴まれてその場に無理やり膝まづかされた。  「いてっ!やめろってばっ!」  俺は、両腕を掴んでいる男たちの手から逃れようとして暴れた。  だけど、悲しいかな。  男たちよりもかなり小柄で細っこい俺の力ではこの男たちの手を振りほどくことなどできなかった。  いや、俺は、チビじゃねぇし!  170センチは、平均身長だって!  ひとしきり暴れた後でくたびれて荒い息をついている俺を見ておっさんは冷酷げに呟いた。  「さて、どうしたものか」  おっさんは、俺の顎に指をかけて顔を上げさせると一瞬、はっとした表情を浮かべた。  「これは、これは。さすが、このルージナルスにおいても十指のうちに入ると言われた美姫クレア・グレイアムの血をひいているだけのことはあるな」  はい?  俺は、膝まづかされたままでおっさんのことをじっと睨み付けた。  「お袋のことを知っているのか?」  俺の問いにおっさんは、目を細めた。  「知っているとも。彼女は、この世界の聖女であり現国母であられるお方に執拗な嫌がらせを働いた罪によって異世界へ追放されたのだ」  マジですか?  俺は、お袋の顔を思い浮かべた。  日本人離れした美しさ。  深い闇色の髪に光の加減で青緑色に見える瞳。  確かに、そう言われると日本人じゃねぇし。  それに、ちょっとつり目できつい印象。  まさしく悪役令嬢じゃねぇか!  俺は、お袋の目の笑ってない笑顔を思い浮かべて少し泣きそうになっていた。  
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