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目で鯛
「おめでとう」の語源をご存知だろうか?
元は「めでたい」であり、それが丁寧な言い回しとなって「おめでとう」になったのだ。
では、「めでたい」とはなんであろう?
「愛でたい」つまり「愛したい」「賞賛したい」という感情から来たものだという話があるが、その説は真っ赤なウソであり、実際にはある男女に関するエピソードによるものである。
今回は、そのお話をしよう。
*
昔々ある村に、1人の木こりが住んでおった。
木こりは、若い娘に恋をした。ところが、娘の憧れは漁師であり、木こりではなかった。
そこで木こりは漁師に転職することを決め、海へと漁に出始めた。
けれども、魚はさっぱり捕れん。
そこで、元木こりの漁師は考えた。
「これは、やり方が悪いのかもしれんなぁ」と。
それから必死になって漁について研究し、雨の日も雪の日も嵐の日も海へ出た。
もはや、恋した娘のことなど、どうでもようなっておった。
そうこうしとる内に月日は流れ、元木こりは本物の漁師となった。
必死になって漁に出る漁師の姿を、海の中から見つめる目があった。1匹の鯛じゃった。
「なんとよう働く若者じゃ」と、鯛は感心しとったんじゃ。
ある日、いつものように懸命に働く漁師の姿を見つめとった鯛に、ついに漁師は気がついた。その瞬間、目と目で見つめ合い、鯛はついに我慢できんようになって、自分から海上へと飛び出すと漁師の船へと乗り込んだ。
その瞬間、鯛は裸の若い娘へと姿を変えた。
海底からその様子を眺めておった海の神さんが、憐れに思って、鯛を人間の娘に変えてくれたのじゃ。
その後、漁師は娘と祝言をあげ、末永く幸せに暮らしたとさ。
*
まさに「目で鯛を釣る」というお話。
これが省略されて「目で鯛」つまり「めでたい」となり、「おめでたい」「おめでとう」と変わっていったのだ。
いまだに結婚式で「めでたい」とか「おめでとう」と人々が口にするのは、そういった理由である。
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