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昨日の敵は今日の味方。
誰かが酔っ払って言っていた。
この言葉が自分にふりかかるなんて思ってもみなかった。
あんなに盛り上がった秘密の恋だったのに、今日ですべて終わった。
私と彼は同じ会社の同期だった。小さな会社ならではの社内恋愛厳禁という規則。
バレる時は結婚する時という暗黙の了解。
私と彼は三年、秘密の恋を楽しんでいた。
ところが、今日の朝会で心臓を貫かれるような話があった。
彼が結婚する。
同じ課に配属された新入社員の女と。
聞いた瞬間、吐き気がした。
けどもなんとか平静を装い、しばらく耐えた。
朝会が終わると、トイレに駆け込んだ。
一人になりたかった。
誰にも会いたくなかった。
ところがトイレには先客がいた。
同じく同期の舞だった。
舞と私は同じ気の強い性格で、とにかく合わなかった。また、仕事でもライバル関係にある。
その気の強い舞が目を真っ赤にして洗面所で顔を洗っていた。
もしかして
向こうも私の様子を見て即座にわかったようだ。
二人で抱きしめあった。
彼の悪口を言い合い、おいおい泣いた。
大嫌いだった舞は私の一番の親友になった。
会社の昼休み、二人で彼の結婚式の会場のホームページを眺めている。
「入り口がここ一つしかないんだね」
舞が私に笑いかける。
「ちょうどいいね」
私も舞に笑いかけた。
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