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蒔田とは、脱サラして芸能人になったアラフォーの男のことである。とても四十代には見えない、若々しいビジュアルを維持しており、女性人気が高い。しかもだ。彼は、男性の育児参加を支援する活動をしており、その活動自体は、『ファザプロ』。ファザープロジェクトの略称である――そう呼ばれて親しまれている。日本の男性の育児参加率が極端に低いことを例に挙げ、彼は、積極的に広告塔として、男性の残業を減らす、育休取得を支援する活動などをしている……そうな。
ただ、それだけの話である。
緑川の名を出すと蒔田の名を出されるのには慣れっこなので「そうですね。彼は緑川の至宝です」と千鶴は受け流す。
会議自体は終了し、雑談タイムに突入したところであり、腕時計が十二時の針をさしていた。頃合いと思い、千鶴は腰を浮かせ、みなに挨拶をした。
「では、……私用で休暇を頂いてすみません。行ってまいります」
＊ ＊ ＊
羽田空港から、のと里山空港へは、飛行機で五十分前後。むしろ、飛行機に乗っている時間よりも、羽田まで移動する時間の方が長い……人間のほうが、大多数のはずだ。
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