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「付き合ってください!」
「……ごめんなさい。まずは友だちから」
百合華は申し訳なさそうに微笑んだ。
「あんたさ、付き合ってみようかなとか思わないの?」
みきはため息をつきながら百合華に聞いた。
「いや、だって好きなわけじゃないし。相手に失礼でしょ。」
「でも、今回告白したのはあのイケメンで有名な山内先輩だよ!」
「まぁ……」
百合華は失笑する。
「……そんなに好きなの?影野のこと。」
その名前を聞いた瞬間、百合華は顔が真っ赤になった。
「正直、どこがいいの?あの陰キャの」
「どこって、みんなが見てないところでみんなを支えてくれてるっていうか、縁の下の力持ちっていうか……」
-1年前 百合華が大雨の中一人で下校していた時
一人で歩いていると、横に(道路側)知らない男子が並んで歩いてきた。
(何この人、なんか怖い)
次の瞬間、猛スピードで車が通り水しぶきが男子にかかった。その男子は、びしょびしょのまま何も無かったかのようにそそくさと百合華の前を通り過ぎて行った。
(あの男子もしかして、私が水しぶきがかかるかもと思って横を通ってくれてた?)
それから百合華はその男子を目で追うようになった。
ある時は他の生徒が落としたゴミを捨ててたり、またある時は先生の手伝いを自らしていたり、常に周りのために誰も見ていないところで頑張っている彼に、百合華は気づいた時には惹かれていた。
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