第六話-和希と千十世といまだわからぬ帰り道

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「いや、だから……」  千十世の言葉を遮って、和希は大きくひとあくびし、 「ぎょーさん喋ったら眠たなってきた……ほなな……」  座席に背をもたせ掛け、おやすみ三秒で寝息を立てる。  まったく、言いたいことばかり言ってくれる。兄と違って奔放で、豪快で、無遠慮で――でも言ったことは守るから、そのうち本当に夢を百個考えて持ってくるかもしれない。 (でも――それも僕には、意味ないものだ。だって、)  和希のその向こうで、変わらず眠っているその小さな寝顔を見る。  美也が――妹が、そこに生きている。  それだけで千十世は生きた心地がするし、それ以上は要らなかった。 『ミヤが大人になって出てったあとも、やりたいこととかないん?』  言わなかった答は、簡単だ。  そうなればやっと終わらせられる。    ――ちとせ、守ってねこの子を。あんたしかいないから。    耳鳴りのように彼女の末期の言葉が鼓膜にまとわりついて止まない、この日々を。    喋る者のいなくなった車内は静かで、ただバスが高速を往く音のみが淡々と連なっていく。  八奈結びに帰りつくには、いまだ少し時間がかかった。 ――『八奈結び商店街を歩いてみれば ―冬やん―』 おしまい

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