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かくして、再び身体の動くようになったエルヴァルドは、剣を手に、コロシアムに舞い戻った。
今まで通り、いや、今まで以上に華麗な勝ちを得るその姿を見た人々は、王者の復活を胸に刻み、不死鳥のごときエルヴァルドの幸運を、さらなる熱狂をもって迎え入れた。
表向きは、対戦相手をも思いやる優しさを見せ。その身体の奥に、誰にも消せない復讐の炎を燃やし。エルヴァルドは白星を得続けていった。
「次の対戦相手が決まった」
アリーナから控え室に戻ったエルヴァルドを出迎えた、コロシアムのオーナーが告げる。
「『破砕』だ。お前にとっては雪辱戦になるだろう。存分に恨みを晴らしてこい」
「雪辱戦じゃあなくて、奴にとっての屈辱戦だあな」
エルヴァルドの肩の上で、悪魔が嗤う。その声はエルヴァルドにしか聞こえず、姿も見えない。だから、必要事項を言い終えたオーナーは、さっさとその場を去ってゆく。
エルヴァルドは、それを穏やかな笑みで見送っていたのだが、不意にその笑みを、獰猛な肉食獣のものにすり替える。
必ず、討ち取ってみせる。ウォードスを。地面に這いつくばらせて、こちらの靴を舐めさせて、その後で、首の骨を砕いてやろう。地獄を、生きながら見せてやろう。
悪魔に魂を売り渡した復活者は、最早心の奥底までをも真っ黒に染めて、引きつった笑いを垂れ流すのであった。
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