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真っ青な空の下、かきいんと、高い金属音が響き渡った。
「勝負あり! 勝者、エルヴァルド・ハイゼン!!」
わっと。すり鉢状のコロシアム中に満ちた熱気が一気に爆発し、勝利を得た者を讃える歓呼が響く。
銀色に輝く剣を手にした黒髪の青年は、蒼い瞳を満足げに細めて、得物を鞘に収める。そして、地面に尻餅をついた対戦相手に歩み寄ると、そっと手を差し伸べ、額から鼻にかけて傷痕の走る以外は端正な美丈夫の顔に、柔らかい笑みを浮かべた。
「さすがは、伝説の王者エルヴァルド殿。引退の危機から復活された頑強さには、到底敵いませぬな」
青年より一回りは年上だろう壮年の対戦相手は、素直な賛辞を述べながら、差し出された手を取る。
「いえ」エルヴァルドはゆるゆると首を横に振り、相手に手を引いて立たせると、健闘を祝うように肩を軽く叩いた。
「貴方の剣捌きも相当なものだった。冷や汗をかいたのは、久しぶりですよ」
負けた相手をも褒めたたえるその謙虚さに、対戦相手が面映そうに微笑む。
「エルヴァルド!!」
「さすがは『不敗のエルヴァルド』!!」
客席からは、熱のこもった歓声が聞こえる。エルヴァルドは、それを見渡し、爽やかな笑顔で手を振ると、踵を返し、アリーナを後にした。
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