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「じゅんじゅんってさぁ、トモさんにだけは冷たいよねぇ」
「……そうか?」
カバンに手を突っ込んで、開けかけのハリボーを取り出す。リクに一つやってから、自分の口にも放り投げた。
リンゴ味だ、と思ったその時、
『今、トモのこと考えてたっしょ?』
つむじ辺りで男の声がした。
「なに?」
「えっ?なにってなに?俺何も言ってないよ」
リクが怪訝そうな顔をする。いや、たしかに今、淳に向かって声をかけたはずだ。
『わかりやす過ぎ。でも、可愛くていいじゃん。』
また、あの声。
と同時に突然、後頭部に石を投げつけられたような痛みを感じる。淳はわけもわからず頭を抱え、激痛に耐えた。
「ちょいちょいちょい〜?!」
リクは跳び上がって淳から離れた。
「じゅんじゅん怖ッ!!なんなの?!例の幽霊に取り憑かれちゃったの?!」
「……へ、変なこと言うなよ、」
「変なのはそっちじゃん!だってじゅんじゅんのギター、シェクターだし……ワンチャンあるじゃんか?!」
『そのワンチャンだよ。ほらほら、手、見てみ?』
言われるままに両腕を出すと、そこに見たこともない黒子が次々と浮かび上がった。
「うわっっ」
腰を抜かして後ろ手をつく。
『はは。その反応いいね。
僕は薫。よろしくね。
コウジの次は君だって、ずっと決めてたんだ。』
どうもさっき死ぬほどアホらしいと思った都市伝説の幽霊に、取り憑かれてしまった、らしい。
その時、不意に遠くにいた智浩と目があった気がした。
彼はリクと淳のやり取りをずっと見ていたようだった。
別にニコリとするでもなく、また目をそらすわけでもなく、ただじっと、淳を見つめていた。
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