0B. 憑

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「じゅんじゅんってさぁ、トモさんにだけは冷たいよねぇ」 「……そうか?」  カバンに手を突っ込んで、開けかけのハリボーを取り出す。リクに一つやってから、自分の口にも放り投げた。  リンゴ味だ、と思ったその時、 『今、トモのこと考えてたっしょ?』  つむじ辺りで男の声がした。 「なに?」 「えっ?なにってなに?俺何も言ってないよ」  リクが怪訝そうな顔をする。いや、たしかに今、淳に向かって声をかけたはずだ。 『わかりやす過ぎ。でも、可愛くていいじゃん。』  また、あの声。  と同時に突然、後頭部に石を投げつけられたような痛みを感じる。淳はわけもわからず頭を抱え、激痛に耐えた。   「ちょいちょいちょい〜?!」  リクは跳び上がって淳から離れた。 「じゅんじゅん怖ッ!!なんなの?!例の幽霊に取り憑かれちゃったの?!」 「……へ、変なこと言うなよ、」 「変なのはそっちじゃん!だってじゅんじゅんのギター、シェクターだし……ワンチャンあるじゃんか?!」 『そのワンチャンだよ。ほらほら、手、見てみ?』  言われるままに両腕を出すと、そこに見たこともない黒子(ほくろ)が次々と浮かび上がった。 「うわっっ」  腰を抜かして後ろ手をつく。 『はは。その反応いいね。  僕は(かおる)。よろしくね。  コウジの次は君だって、ずっと決めてたんだ。』  どうもさっき死ぬほどアホらしいと思った都市伝説の幽霊に、取り憑かれてしまった、らしい。  その時、不意に遠くにいた智浩と目があった気がした。  彼はリクと淳のやり取りをずっと見ていたようだった。  別にニコリとするでもなく、また目をそらすわけでもなく、ただじっと、淳を見つめていた。
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