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「今日も遅くなると思うから夕飯もいらないし、先に寝ていてもいいから」
玄関を出ていこうとして、夫の秀樹が振り返りながら伝えてきた。
「こんな年の瀬の三十日までお仕事ご苦労様。お風呂は入れるように準備しておくね」
「ああ、ありがとう。大掃除も任せっきりですまない。じゃあ、行ってくるよ」
私、槇原千冬の夫である秀樹は自動車メーカーに勤務しており、休日出勤など忙しく働いてくれているお蔭で経済的にもかなりゆとりのある生活を送れている。
夫が出勤してから、私は朝食の後片付けをし、洗濯機を回す。冬場の洗濯物干しは寒さがかなり厳しいが、できれば天日で乾かしたい。やはりお日さまの香りを家族に味わってもらいたい。そんなことを思いながら洗濯物を干していると玄関の扉が開く音がした。
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